犬と猫と歩く日々。

Todd Rundgren、唐沢寿明が好き

ミュージカル 「誓いのコイン」!

坊ちゃん劇場は、その名前から地元に出来たと聞いても少し敬遠していました。高知県が、何かにつけて、施設や物の名前に「龍馬」をつけるように松山市は「坊ちゃん」をつけます。「坊ちゃんスタジアム」とかですね。龍馬は高知県人ですが、坊ちゃんは江戸っ子ですからね…そこが微妙な感じでして。

でも、ちょっと控えめな良い劇場で、格好良いのですよ。演劇好きに好まれる感じです。ホールの大きさは、松山市民会館中ホールくらいでしょうか。
早速、ロビーに飾られている松山城の井戸で見つかったルーブルコインの実物展示をみて、席に座ります。

幕が上がりました。ミュージカルのはじまりです。
戦争のシーン、松山に捕虜がくると聞かされる市民達の驚き、怒り。
役人たちからの「国の為に戦った為に捕虜になった彼らを侮辱する事は慎め」という通達。日赤病院の看護婦たちの、「彼らを精一杯看護(おもてなし)しよう」という決意。
捕虜も普通の人間であると分かって来て、ガンガン仲良くなっていく市民とロシア人捕虜達。

そういうシーンを基本的に全て、歌で表現していくのです。
流石プロの役者さんで、声量も歌の上手さも素晴らしいものです。地元の役者さんも居ますが、東北の役者さんも伊予弁を完璧に使って演技、表現している所が凄いです。
話としては、松山城のコインが現実に存在しているので、そのコインが存在するに至った経緯を描いています。
その経緯というのは、未だ分かっておらず、劇で描いているのは想像を元にした虚構なんだけど、どうしても全て現実にあった出来事に思えてしまいます。

劇中に「レオーノフ大佐」という人物が登場します。大佐階級にもなると、松山から母国ロシアに帰国しても良いという許可が下りているのです。

しかし、「松山に収容された一般兵と共にありたい」と帰国を固辞します。
とても格好良い役回りで、「こんな人は現実には居ないだろうな〜」と思いながら見ていました。

所が、この大佐、実在した人物がモデルになっていました。
この事について、詳しく書いて下さっている方のブログにたどり着きました。
松山市にある、ロシア人墓地に来て下さり、ブログにレポートして下さってます。

門前の小僧さんの「歩き遍路日記 ロシア人墓地」http://jh5swz.exblog.jp/16978480/ のリンク、転載許可をいただきました。

                          • 以下、転載させていただきます-----------

「ロシア兵の多くは戦争終結後、帰国しましたが、
収容中に病気などで亡くなった98名を悼み、松山で手厚く葬られました。
(中略)
石碑には「露軍砲兵卒〇〇の墓」と日本語で彫られ、前左の黒石板には、名前と死亡年月日がロシア語と日本語で書かれ、前右のプレートには、ロシア語で階級と名前と亡くなった日が彫ってあり、花挿しの供花は絶えることが無いそうです。

その98柱の石碑の中に、とりわけ大きなボイスマン大佐の墓標と胸像があります。彼は旅順艦隊の戦艦ペレスベートの艦長で、海戦で負傷し捕虜になりました。日本側は、大佐という階級と負傷兵であることを考慮して、ロシアに送還しようと策しましたが「兵卒と共にありたい」と拒み、「それなら妻子を呼び寄せよ」、と勧めましたがこれも謝辞し、収容されて八ヵ月後、胃がんで他界しました。享年50歳。

                              • 転載ここまで------------------

(門前の小僧さんのブログの方に、もっと詳しく当時の松山の様子、またボイスマン大佐の胸像の写真など載せて下さっていますので、是非ご覧になって下さいね)

劇は、悲劇ではなく、希望を感じる結末になっていて、私は思わず笑顔になってしまいました!

司馬遼太郎の「坂の上の雲」に「日露戦争は、人道的な面を持った最後の戦争」というふうな事が書かれてあったのを思いだしました。戦争という行為に人道も何も無い、しかし最大限、人道に配慮する事は出来ると思わずにはいられない。同時に、第二次世界大戦の時のシベリア抑留を思い起こしたりもしますが本来人間には、本当はそれが出来るはずなんだな…と感じた「誓いのコイン」でした。

「誓いのコイン」愛媛県東温市の「坊ちゃん劇場」
http://www.botchan.co.jp/
火曜日以外、毎日上演されています。最終日 千秋楽は2012年3月18日です。
気軽に見られる、本格的なミュージカル、というのは全国的にも珍しいと思います。
是非ご覧になって下さいね〜!