「ショージとタカオ」を見てきました。「ショージとタカオ」は布川事件で殺人の汚名と冤罪を着せられました。桜井昌司さん、杉山卓男さんは無期懲役となり、1967年から1996年の「29年間」獄中で過ごす事になります。
映画「ショージとタカオ」はドキュメンタリー作品。96年に二人が仮出所した瞬間から現在までを1人の女性監督が映像として残しています。
2010年度 キネマ旬報 文化映画部門 第一位を受賞しています。
http://coco.to/movie/9557 一般の方達のレビュー集
http://j-fpc.com/twomen.html (日本映画ペンクラブの大竹洋子さんの映画についてのコメント)
「ショージとタカオ」の劇場上映スケジュール
http://shojitakao.com/theater.html
私は、「布川事件」を知らなかったのですが、今年の5月、テレビのニュースで「布川事件無罪確定」という言葉が流れたのと「二人のおじさん」が抱き合って喜んでいた映像が印象に残ってます。
「あぁ〜おじさんたち良かったなぁ〜。冤罪とか最悪だよね。でも一つの事件で二人の人が冤罪をきせられちゃったのか。どんな事件?」と思いつつ布川事件については良く分からないまま…過ごしていました。
今回、高知市立の自由民権会館(すごい名前でしょう)にて、この映画が上映されると知り、見に行きました。
初めのシーンの、布川事件の支援者のコンサートで、オペラ歌手の方が、ショージさん作詞の歌を「たんぽぽ…」と歌いはじめた瞬間、涙腺が崩壊しそうになったのですがなんとかこらえて。
「二人は、この歌をここで聴く事は出来ないけれど、きっと(独房の)壁に耳を押し当てて聴いているでしょう」という会場のナレーション。
二人が仮出所してからの映像がはじまります。
29年間も、塀の中にいたので世の中は、未知の世界と変わっています。
「女子高校生のスカート、あんなにミニで大丈夫!?」
カード式公衆電話の使い方にとまどう。電車で切符の買い方に悩む所。
初めて行った「回転寿司」で、ワサビに泣くシーン。(ワサビのきいた食べ物は、刑務所にはないらしいです)
やがて、二人は働きはじめ、恋人を得て結婚もし子供も生まれます。その間も、仮出所という事で、気が抜けない毎日(何より無実の罪を着せられ29年も独房にいたという苦しさ、たとえ歩いていて信号無視を一回しても法を犯したという事で刑務所に逆戻りするかもしれない)を送ります。そして、無罪を求めて何度も再審請求〜棄却される辛さ。明るいショージさんも、夜中に窓を開けて飛び降りそうになった事もあると奥さんは言う。
しかし、何より、ショージとタカオのキャラクターがいいのです。
元不良、性格も正反対、かつては仲が悪かった。ショージはおしゃべりで詩人、タカオは無口。ノッポとチビの凸凹コンビ…
2人が、色んな事にとまどいながら、前を見て歩いています。
でも軽妙な明るさを醸し出している人柄。ひょうひょうとした、ユーモアのセンス。
劇場内はしばしば、笑いが起こり拍手もありました。
私は夫と映画を見にいきましたが、二人ともすっかり引き込まれてしまいました。
二人が古くからの友達か、身内のおじさんであるかのように感じました。
実は、自分は、学校で上映される感じの「人権啓発映画の感じ」であれば、多分辛くて見られなかったと思うのです。
冤罪は、こんなに多くの物を、人から奪いますという事、それは知るべき事なのですが辛すぎて見られなくなるから。むごい事が、実際にあるという事が正視できなくなるんですね。
でも、この映画は見ていると「ショージとタカオ(と撮り続けた監督さん)」が愛すべき人たちなんだという事が、じわーと心に効いてきます。彼らを支える人々の笑顔も。
帰ってからも、夫とショージとタカオについて話してしまいます。
映画から帰った日の夕食が「こんもり辛子が盛られた冷やし中華」だったのです。
私「冷やし中華に辛子って、やったことないんだけど。この辛子は全部混ぜちゃうの?つけながら食べるの?」
夫「混ぜるんだよ。混ぜないとショージみたいに辛くて泣いちまう」
私「そういえば、いっとき居た”ヤマンバギャル”は、ショージとタカオは見たのかな?みたらミニ以上に驚くでしょう」
夫「あれは驚くよ。どう説明してもびっくりするわ」
軽くて重い、泣けてくるけど楽しい、そんな映画でした。
人生はしっかり続いて行くという事を実感しました。
「ショージとタカオ」、全国各地の映画館で上映されています!
(釜山国際映画祭にも正式出品されたそうです。加えて、監督さんは、マイケル・ジャクソンファンの方なのです。重要)
お近くで上映されるという機会をお持ちの方、ぜひご覧になられて下さいね!
(特に上の上映スケジュールでは、愛媛は2週間ちかく有ります!)